知的障害と発達障害の方へ

知的障害と発達障害の障害年金請求

知的障害

知的障害とは?

知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものです。

請求の時期は?

知的障害のように20歳未満で厚生年金保険等の被用者年金制度に未加入期間に発症した障害年金の請求は20歳の誕生日を障害認定日として、20歳に到達してから障害基礎年金の請求をすることになります。

請求のポイントは?

障害年金の請求には障害認定日から3か月以内の現症状を記載した診断書が必要です。用意できない場合は事後重症の請求になり、請求日の翌月からの支給になります。知的障害の方は20歳になるとすぐに受診しましょう。このことはポイントです。

知的障害の等級表を一部例示すると次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級 知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断します。
また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。


日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。


就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事しています。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断します。

発達障害

発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものです。


発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行います。

また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。


発達障害は、通常低年齢で発症する疾患ですが、知的障害を伴わないアスペルガー障害や広汎性発達障害については、医学的には先天性であるとされていますが、中には高学歴で就職後に日常生活に支障をきたすような症状が出現し、20歳以降に初めて受診してアスペルガー症候群等の発達障害であると診断されることもあります。


幼少時にさしたる症状がなく厚生年金加入後に初診日がある者についてもアスペルガー症候群 障害等の発達障害で一律に初診日を20歳前にすることは、障害厚生年金の受給権を阻害することにもなるため実際に受診した日を初診日とすることになっています。

発達障害の等級表を一部例示すると次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮のうえ、社会的な適応性の程度によって判断します。


就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事しています。
したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断します。

発達障害は次のようなものがあります。

注意欠陥多動性障害 ADHD attention deficit hyperactivity disorder
落ち着かない子供といわれる。通常IQは正常ですが、学習障害、てんかんや脳波異常を合併することもあります。

高機能自閉
知能は正常、驚くべき記憶力や計算能力を示したり、てんかんを合併したりすることがあります。

適応障害
本人はがんばってやろうとするが、周囲の環境の影響でだめになる。人格障害より正常。知的障害があれば併せて認定し、適応障害のみでは認定対象になりません。

小児自閉症
3つの必須の行動的症状

  • 対人関係など社会的な行動がうまくできない
  • ことばのコミュニケーションがうまくできない
  • 行動や興味の対象が限られる
    などの特徴を全て持っているのが自閉症です。

自閉症もしく上位概念の拡張概念として広汎性発達障害があり、非定型自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群などが含まれる。

自閉症は男性に圧倒的に多く、頻度は1000人に2人以下です。精神遅滞の合併頻度は70~80%と高く、認知機能に特異的な不均衡さがあって、時に特異的に良好な記録力を示すこともあります。

広汎性発達障害
自閉症もしく上位概念の拡張概念として設定されている。いわゆる自閉でコミュニケーションがうまく取れないような症状を示す発達の異常で知的障害を伴うこともあります。

レット症候群
新生児期から1歳6ヶ月ぐらいまで正常に発達し、その後から精神運動の退行、感情交流障害、手もみ現象、上肢機能の退行、歩行失調などが始まる。ほとんどが女性が発症、ときに多呼吸がみられる。

アスペルガー症候群 AS Asperger
広汎性発達障害の特徴を持つが言語機能や知的水準が正常かそれに近く、表面的には対人的なやりとりがある程度できる軽症な自閉症の一種で「社会性の欠如」「コミュニケーション能力の欠如」「強いこだわり」の三つの症状が特徴の発達障害です。

広汎性発達障害の取り扱い

広汎性発達障害はICD-10国際疾病分類第10版においてF84に分類されています。詳細はさらにF84.0~F84.9に分類されます。

広汎性発達障害のF84.0~F84.9はすべて障害年金の対象障害になります。

F84 広汎性発達障害
・F84.0 自閉症
 カナー症候群 高機能自閉症 児童精神病 自閉症 小児自閉症 小児精神病
・F84.1 非定型自閉症
 自閉的特徴を伴う知的障害 非定型自閉症 非定型小児精神病  
・F84.2 レット症候群
・F84.3 その他の小児(児童)期崩壊性障害
 ヘラー症候群 共生精神病 崩壊精神病
・F84.4 知的障害(精神遅滞)と常同運動に関連した過動性障害
・F84.5 アスペルガー症候群
 アスペルガー症候群 自閉的精神病質  小児シゾイド障害 小児期型統合失調症
・F84.8 その他の広汎性発達障害
 自閉性精神発達遅滞
・F84.9 広汎性発達障害、詳細不明

* F84.0~F84.9の障害認定のポイント・・・
知的障害(精神遅滞)の有無により以下のように分かれます。

<知的障害(精神遅滞)のある人 主に自閉症など>
知的障害(精神遅滞)の程度、ならびに日常生活能力を含めて判断します。

<知的障害(精神遅滞)のない人 主にアスペルガー症候群など>
日常生活能力から判断します。

ワンポイント 

発達障害の有名人
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ、理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン、画家のレオナルド・ダビンチも専門家からアスペルガー症候群(AS)ではないかと指摘されています。

知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱い

精神障害の障害認定基準が平成23年9月1日改正され知的障害または発達障害の者にその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定は行わず、諸症状を総合的に判断して認定することになりました。

精神障害が併発しているケースは障害の特質性から初診日及び障害状態の認定契機を次のとおりとして、認定に当たっては、これらを目安に発病の経過や症状から総合的に判断します。

  • うつ病又は統合失調症と診断されていた者に後から発達障害が判明するケースについては、そのほとんどが診断名の変更であり、あらたな疾病が発症したものでないことから別疾病とせず「同一疾病」として扱います。
  • 発達障害と診断された者に後からうつ病や神経症で精神病様態を併発した場合は、うつ病や精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考えが一般的であることから「同一疾病」として扱います。
  • 知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾病」として扱います。
    例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとします。
    なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害のある者については、発達障害の症状により、初めて診療を受けた日を初診とし、「別疾病」として扱います。
  • 知的障害と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して発症したという考え方が一般的であることから「同一疾病」とします。
  • 知的障害と診断された者に後から神経症で精神病様態を併発した場合は「別疾病」とします。
    ただし、「統合失調症(F2)」の病態を示している場合は、統合失調症が併発した場合として取扱い、「そううつ病(気分(感情)障害)(F3)」の病態を示している場合は、うつ病が併発した場合として取り扱います。
  • 発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから原則「別疾病」とします。
    ただし、「同一疾病」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付してくることがあります。したがって、このような場合は「同一疾病」とします。

発達障害や知的障害と精神疾患が併発する場合の一例

前発疾病 後発疾病 判定
発達障害 うつ病 同一疾病
発達障害 神経症で精神病様態 同一疾病
うつ病または統合失調症 発達障害 診断名の変更
知的障害(軽度) 発達障害 同一疾病
知的障害 うつ病 同一疾病
知的障害 神経症で精神病様態 別疾患
知的障害または発達障害 統合失調症 前発疾患の病態として出現している場合は同一疾患(確認が必要)
知的障害または発達障害 その他精神疾患 別疾患

<参考> 発達障害は、ICD-10では、F80からF89、F90からF98に該当します。

F80-F89 心理的発達の障害
F80 会話及び言語の特異的発達障害
・F80.0 特異的会話構音障害
・F80.1 表出性言語障害
・F80.2 受容性言語障害
・F80.3 てんかんを伴う後天性失語(症)[ランドウ・クレフナー 症候群] ・F80.8 その他の会話及び言語の発達障害
・F80.9 会話及び言語の発達障害,詳細不明
F81 学習能力の特異的発達障害
・F81.0 特異的読字障害
・F81.1 特異的書字障害
・F81.2 算数能力の特異的障害
・F81.3 学習能力の混合性障害
・F81.8 その他の学習能力発達障害
・F81.9 学習能力発達障害,詳細不明
F82 運動機能の特異的発達障害
F83 混合性特異的発達障害
F84 広汎性発達障害
・F84.0 自閉症
・F84.1 非定型自閉症
・F84.2 レット症候群
・F84.3 その他の小児<児童>期崩壊性障害
・F84.4 知的障害〈精神遅滞〉と常同運動に関連した過動性障害
・F84.5 アスペルガー症候群
・F84.8 その他の広汎性発達障害
・F84.9 広汎性発達障害,詳細不明
F88 その他の心理的発達障害
F89 詳細不明の心理的発達障害

F90-F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害
F90 多動性障害
・F90.0 活動性及び注意の障害
・F90.1 多動性行為障害
・F90.8 その他の多動性障害
・F90.9 多動性障害,詳細不明
F91 行為障害
・F91.0 家庭限局性行為障害
・F91.1 非社会化型<グループ化されない>行為障害
・F91.2 社会化型<グループ化された>行為障害
・F91.3 反抗挑戦性障害
・F91.8 その他の行為障害
・F91.9 行為障害,詳細不明
F92 行為及び情緒の混合性障害
・F92.0 抑うつ性行為障害
・F92.8 その他の行為及び情緒の混合性障害
・F92.9 行為及び情緒の混合性障害,詳細不明
F93 小児<児童>期に特異的に発症する情緒障害
・F93.0 小児<児童>期の分離不安障害
・F93.1 小児<児童>期の恐怖症性不安障害
・F93.2 小児<児童>期の社交不安障害
・F93.3 同胞抗争障害
・F93.8 その他の小児<児童>期の情緒障害
・F93.9 小児<児童>期の情緒障害,詳細不明
F94 小児<児童>期及び青年期に特異的に発症する社会的機能の障害
・F94.0 選択(性)かん<縅>黙
・F94.1 小児<児童>期の反応性愛着障害
・F94.2 小児<児童>期の脱抑制性愛着障害
・F94.8 その他の小児<児童>期の社会的機能の障害
・F94.9 小児<児童>期の社会的機能の障害,詳細不明
F95 チック障害
・F95.0 一過性チック障害
・F95.1 慢性運動性又は音声性チック障害
・F95.2 音声性及び多発運動性の両者を含むチック障害[ドゥ ラ トゥーレット症候群] ・F95.8 その他のチック障害
・F95.9 チック障害,詳細不明
F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の行動及び情緒の障害
・F98.0 非器質性遺尿(症)
・F98.1 非器質性遺糞(症)
・F98.2 乳幼児期及び小児<児童>期の哺育障害
・F98.3 乳幼児期及び小児<児童>期の異食(症)
・F98.4 常同性運動障害
・F98.5 吃音症
・F98.6 早口<乱雑>言語症
・F98.8 小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の明示された行動及び情緒の障害
・F98.9 小児<児童>期及び青年期に通常発症する詳細不明の行動及び情緒の障害