肢体の機能の障害の障害認定基準
脳梗塞・脳出血等の脳血管障害の障害年金
中高年の方にとって脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は他人事ではないと思いますので、脳血管障害になって肢体が不自由になった場合の障害年金について纏めてみました。
障害年金が受けられる程度の障害であるか否かを見るときは、 一定の時点での障害の状態を審査しますが、この日を「障害認定日」といいます。
この「障害認定日」は、原則として、 障害年金の請求事由となった傷病の初診日から1年6か月が経過した日です。
病気やけがで初めてお医者さんに診てもらった初診日当時は悪くても治療をすれば元に戻らなくても回復治癒します。どこかで区切って障害年金の受給の可否を判断する必要があります。この区切りの日が「障害認定日」です。
この「障害認定日」は、原則として、疾病にかかり、または負傷して初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)から起算して1年6か月が経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日、または、症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含みます)とされています。
傷病が治った場合とは
- 手足の切断等の器質き欠損もしくは変形、または後遺症を残している場合は、医学的にその傷病が治ったとき。
- 症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ医療効果が期待し得ない状態となったとき、及び症状が自然経過により到達すると認められる最終の状態(症状固定)に達したときとされています。
脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は平成8年度国民年金審査医員会の議事確認事項で特例的に運用で初診日から6カ月以上経過した日に症状固定が認められるときはその日、6カ月未満の症状固定は認められないとされて、6ヶ月経過して主治医が症状固定とした場合は障害年金の特例的に請求が可能とされていました。
脳出血・脳梗塞等の特例請求
脳出血・脳梗塞等の脳血管障害の障害年金は初診日から6ヶ月以上経過した日に症状固定が認められるときはその日で1年6か月を待たずに請求できます。6ヶ月未満での症状固定は認められません。
この特例的に運用してきたことが平成24年9月1日改正の障害年金認定基準で脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6カ月経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復が望めないと認められるときと明文化されました。
このように議事確認事項、医学的観点から、それ以上の機能回復が望めないと医師が診断書に書くと1年6か月が経過していなくても特例でなく障害年金の請求が可能になりました。
ただし、請求しても 初診日から1年6か月経った日、あるいは症状固定に至った日において 国民年金・厚生年金保険障害認定基準の定める障害の状態に該当しなければ、障害年金は受給できません。
このような場合は、その後悪化すれば65歳までに限り請求できます。 これを事後重症請求といいます。
脳梗塞・脳出血等の脳血管障害で初診日から6カ月以上経過した日に症状固定したと主治医が診断したら1年6ヶ月を待たず障害年金の請求をしてみることをお勧めします。
脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は肢体の機能の障害の障害認定基準により認定されます。
肢体の機能の障害の障害認定基準
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2 級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする 病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3 級 | 身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
認定要領
(1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、本節 「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「第4 肢体の機能の障害」として認定する。
(2) 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
(3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 | 障 害 の 状 態 |
---|---|
1 級 | 1. 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの |
2. 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの | |
2 級 | 1. 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの |
2. 四肢に機能障害を残すもの | |
3 級 | 一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの |
(注) 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定すること。
なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定すること。
(4) 日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することが
できないが、おおむね次のとおりである。
ア 手指の機能
(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ) ひもを結ぶ
イ 上肢の機能
(ア) さじで食事をする
(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
ウ 下肢の機能
(ア) 片足で立つ
(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ) 立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ) 階段を下りる
なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。
(5) 身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。
ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。
イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが 「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。
ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で 全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。