脳梗塞・脳出血等の脳血管障害の障害年金

脳梗塞・脳出血等の脳血管障害の障害年金

中高年の方にとって脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は他人事ではないと思います。

新型コロナウイルス感染者の30代から40代の方でも脳梗塞になる可能性があるという報告もされており、年代に関係なく脳血管障害は起こる可能性があります。

脳梗塞・脳出血の後遺症は体の麻痺等の肢体不自由、言語機能障害、体の機能には問題がなくても認知機能に障害がある高次脳機能障害などがあります。

ここでは、脳血管障害になって肢体が不自由になった場合の障害年金について解説します。

肢体の障害の認定基準は、上肢の障害、下肢の障害、体幹・脊柱の機能の障害、肢体の機能の障害に分かれています。

肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は肢体の機能の障害の障害認定基準により認定されます。

 

肢体の機能の障害の障害認定基準は次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2 級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする 病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3 級

身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

*前各号と同程度以上の前各号は上肢の障害等の認定基準の事です

認定要領では次のように書かれています。

・ 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定されます。

・ 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定されます。

・肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し認定されます。

各等級に相当すると認められるものの一部例示は次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1 級

1. 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの・・・日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態

2. 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの・・・日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが 「一人でできるが非常に不自由な場合」

2 級

1. 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの・・・日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」

2. 四肢に機能障害を残すもの・・・日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」

3 級

一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの・・・日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」

・ 日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができませんが、おおむね次のように区別されています。

なお、手指の機能と上肢の機能とは切り離して評価することなく、手指の機能は上肢の機能の一部として取り扱われます

手指の機能
(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ) ひもを結ぶ

 上肢の機能
(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)
(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)
(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

 下肢の機能
(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)
(ウ) 歩く(屋外)
(エ) 立ち上がる
(オ) 階段を上る
(カ) 階段を下りる

 

脳梗塞や脳出血の初診日は?相当因果関係の有無?

障害年金の制度では、前発の病気と後発の病気の間に相当因果関係がある場合は、前発の病気で初めて病院等を受診した日が初診日とされています。

一般的に脳梗塞や脳卒中の場合、脳梗塞や脳出血(後発)となったのは、高血圧(前発)が原因だと言われることが多くあります。

しかし、障害認定においては、原則として双方の間(高血圧と脳梗塞)には相当因果関係はないものとされています。

これは「昭和58年2月に社会保険審査会が、医学的には、高血圧と脳出血は「因果関係」がありますが、高血圧があれば必ず脳出血が発症するとは限らず、また、脳出血は高血圧以外の原因でも起こるのであるから、因果関係なしとした」ことによります。

また、糖尿病の方に比較的多くみられる動脈硬化による病気に脳出血や脳梗塞がありますが、因果関係はないとされます。

つまり、高血圧や糖尿病が原因で脳梗塞や脳出血となった場合でも、高血圧や糖尿病で病院を受診した日が初診日とはならず、脳梗塞や脳卒中で病院を受診した日が初診日とされます。

 

相当因果関係ありもあります。

脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞と血栓、塞栓、心疾患(弁膜症、不整脈、狭心症等)は因果関係ありとされています。

心房細動による高血圧性心疾患も因果関係ありとされるケースがあります。

 

脳梗塞や脳卒中の障害認定日は?

障害年金が受けられる程度の障害であるか否かを見るときは、 一定の時点での障害の状態を審査しますが、この日を「障害認定日」といいます。
この「障害認定日」は、原則として、 障害年金の請求事由となった傷病の初診日から1年6か月が経過した日です。

病気やけがで初めてお医者さんに診てもらった初診日当時は悪くても、治療をすれば元に戻らなくても回復治癒しますので、どこかで区切って障害年金の受給の可否を判断する必要があります。この区切りの日が「障害認定日」です。

この「障害認定日」は、原則として、疾病にかかり、または負傷して初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)から起算して1年6か月が経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日、または、症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含みます)とされています。

 

傷病が治った場合とは?

手足の切断等の器質的欠損もしくは変形、または後遺症を残している場合は、医学的にその傷病が治ったとき。

症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ医療効果が期待し得ない状態となったとき、及び症状が自然経過により到達すると認められる最終の状態(症状固定)に達したときとされています。

脳梗塞・脳出血等の脳血管障害は「平成8年度国民年金審査医員会の議事確認事項で特例的な運用で初診日から6カ月以上経過した日に症状固定が認められるときはその日、6カ月未満の症状固定は認められないとされて、6ヶ月経過して主治医が症状固定とした場合は障害年金の特例的に請求が可能」とされていました。

この特例的に運用してきたことが、平成24年9月1日改正の障害年金認定基準で脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6カ月経過した日以後に、医学的観点からそれ以上の機能回復が望めないと認められるときと明文化されました。

このように議事確認事項、医学的観点から、それ以上の機能回復が望めない症状固定と医師が診断書に書くと、1年6か月が経過していなくても症状固定で障害年金の請求が可能になりました。

ただし、請求しても 初診日から1年6か月経った日、あるいは症状固定に至った日において 国民年金・厚生年金保険障害認定基準の定める障害の状態に該当しなければ、障害年金は受給できません。
このような場合は、その後悪化すれば65歳までに限り請求できます。これを事後重症請求といいます。

症状固定とは、リハビリ病院である程度リハビリが終了したために他の施設に転院するように促された、または、自宅療養になって近所の内科医院で薬の処方だけになったような場合です

このような場合、「これ以上の機能回復がほとんど認められない不可逆性が認められる」可能性がありますので、診断書の作成を依頼する前に医師に確認しておく必要があります。

初診日から6ヶ月経過時点で症状が固定されていると確認されるなら、その時点から障害年金の請求ができるのです。

脳梗塞・脳出血等の脳血管障害で初診日から6カ月以上経過した日に症状固定したと主治医が診断したら、1年6ヶ月を待たず障害年金の請求をしてみることをお勧めします。

 

診断書の作成依頼をする医療機関は?

診断書の作成依頼をする時点の受診医療機関がリハビリ病院を退院して近所の内科医院の場合があります。

このような場合、内科医院で診断書を作成依頼するのはお勧めできません。障害年金用の診断書は記載事項が多く内科の先生は肢体用の診断書を書くのに慣れていません。

障害年金の請求は一発勝負と思ってください。リハビリ病院を受診して診断書は専門の先生に書いていただきましょう。

 

自分で請求する場合に診断書で確認する項目は?

脳梗塞・脳出血等の脳血管障害の障害年金で使用する診断書は「肢体の障害用:様式第120号の3」です。

診断書では、次の項目を確認してください。

初診日から1年6ヶ月以内に「症状固定がある」として障害年金を請求する場合、肢体の障害用の診断書の表面⑦「傷病が治った(症状が固定して治療の効果が期待できない状態を含む。)かどうか」欄に症状が治った(固定)の確認に〇がされているか。年月日が記載されて確認又は推定に○がされているか。

診断書裏面㉒「予後」欄に「不詳」又は「症状は改善する見込みはない」と記載されているか。

以上2点は必ず確認しておく必要があります。

 

脳梗塞や脳出血の後遺症で肢体以外にも障害が残った場合

脳梗塞や脳出血の後遺症は、肢体以外にも言語の障害、記憶の障害(高次脳機能障害)が残ることがあります。

肢体の障害だけで1級相当と自信があれば肢体用の診断書1枚を提出する方法もありますが、普通はそれぞれの診断書の提出をお勧めします。

言語機能の障害の場合

肢体の障害以外に言語機能の障害が残っている場合は「言語機能の障害用:様式第120号の2」を提出します。

高次脳機能障害の場合

肢体の障害以外に高次脳機能障害で、記憶障害や遂行機能障害、認知障害などが残っている場合は「精神の障害用:様式第120号の4」を提出します。

ただし、高次脳機能障害の障害認定日は、初診日から1年6ヵ月経過した日です。

初診日から1年6カ月以内に請求する場合は、肢体と言語の障害で請求して2級や3級認定になった場合に、高次脳機能障害も併せて上位等級にならないか考えます。

肢体と言語の障害で2級認定となった場合、高次脳機能障害が2級になれば併合認定で1級になります。

高次脳機能障害が3級の場合は選択により肢体と言語の2級が支給されます。2級プラス3級が1級になるのは3級障害が眼か耳の障害の場合だけです。

高次脳機能障害についての詳しい解説はこちらにあります。クリックして参考にしてください。

ワンポイント  脳は一梗塞・一出血が一疾病です

脳梗塞や脳出血による肢体不自由や高次脳機能障害等で障害年金を受給していて、状態が悪化した場合、新しく脳梗塞か脳出血が発生したのであれば、脳の別の部位(場所)の出血や梗塞のため年金額改定請求ではなく新しい別傷病による新規請求になります。

脳は一梗塞・一出血が一疾病です。同じ病名でも新しい傷病なので新規請求になるので注意してください。