労災との調整は?

労働者災害補償保険法・損害賠償との調整は?

労働者災害補償保険法の給付が行われる事故

① 通勤災害以外の業務上の事故

厚生年金保険法等の被保険者が仕事中(業務上)に事故に遭った場合は、その者を雇用している事業主は損害賠償を行う義務が負うことになっています。

事業主は通常は万一の事故に備えて労働者災害補償保険法(以下労災法)に加入しており、事故が起きた場合は労災法による補償が行われます。

したがって、厚生年金保険法等の被保険者が業務上の事故に遭った場合は、厚生年金保険法等からの年金と労災法からの給付と二つの給付が重複して行われることになります。

ただし、障害厚生年金・障害基礎年金の支給事由になった傷病が、業務上災害または通勤災害によるもので、その傷病に対して、労災保険から休業(補償)給付、傷病(補償)年金、障害(補償)年金のいずれかが受給できる場合は、社会保険の障害厚生年金・障害基礎年金は全額支給し、労災保険給付の方が減額調整を行い二重の補償が行われないようになっています。

なお、事業主が従業員に対し、労災法による給付(労災給付)に上乗せして損害賠償を行う場合は、厚生年金保険法等からの年金及び労災法による給付の双方で調整が行われます。

また、事故の原因が同僚の不注意によるような場合であって、その同僚が労災法による給付以外に損害賠償を行ったときでも、その損害賠償が同様の性格のものであれば、前途同様に双方で調整が行われます。

② 通勤災害の場合

通常は前述①と同様の取扱いとなりますが、通勤時の事故が交通事故で加害者の加入していた自動車損害賠償責任保険等から支払われる損害賠償等を受けた場合、各々の給付と調整を行うことになります。

③労災保険給付の減額率

 

厚生年金等年金種別 労災保険
障害補償年金 傷病補償年金
障害年金 傷病年金
障害厚生年金・障害基礎年金 ▲27% ▲27%
障害厚生年金 ▲17% ▲14%
障害基礎年金 ▲12% ▲12%
障害年金(旧法厚生年金) ▲26% ▲25%
障害年金(旧法国民年金) ▲11% ▲11%

<参考>
障害補償年金は業務上のケガや病気は治ったが、体に障害が残ったときに支給
傷病補償年金は業務上のケガや病気が1年6ヶ月たっても治らず、かつその傷病により障害状態にあるときに支給

④その他注意するポイント

  •  20歳前の障害基礎年金は労災保険給付を受給する場合は支給停止になります。障害基礎年金が労災保険給付の支給事由となった傷病と別疾病(先天性障害)で受給している場合でも労災保険給付を受給する期間は支給停止されます。       (国民年金法第36条の2)
  •  障害厚生年金・障害基礎年金の支給事由となっている傷病と労災保険給付の支給事由となっている傷病が別疾病の場合は併給調整の対象外です。労災保険給付は減額されず全額支給されます。
  •  労災保険給付が減額支給される場合であっても、その労災保険給付に付随して支給される障害(傷病)特別年金と障害(傷病)特別支給金は減額されず全額支給されます。これは、障害(傷病)特別年金と障害(傷病)特別支給金は労災保険給付ではなく労働福祉事業として支給されるものだからです。
  •  労災保険の障害等級8~14級に該当する場合に支給される障害(補償)一時金は、障害厚生年金・障害基礎年金と併給調整の対象にはなりません。
  •  労災保険給付と同一の支給事由(傷病)による障害厚生年金・障害基礎年金の受給者が、老齢年金や遺族年金の受給権も持っている場合、その老齢年金や遺族年金の方を受給選択すれば、労災保険給付は減額されず全額支給されます。
  •  厚生年金保険の障害手当金は、その傷病の治癒日に、同一の支給事由(傷病)による労災保険給付の受給権を持っている場合は、例えその労災保険給付を実際に受給していない場合であっても支給されません。                (厚生年金保険法第56条)

損害賠償金と障害年金の調整

厚生年金保険法等の被保険者が交通事故等の第三者行為による事故に遭い、負傷し、傷病にかかった場合、前述したように被害を受けた被保険者は、加害者の第三者に対し損害賠償の請求権が発生します。また、その事故等により保険給付(年金・手当金・一時金)の受給権も同時に発生する場合があります。

この場合、被害を受けた被保険者は、同一事由により二重の生活保障を受けることになります。被害者の損害については本来、加害者である第三者が賠償すべきものであり、その事故が仮に起こっていないとしたら、その事故に因る障害年金の受給権も発生することはなく年金を支払う必要も生じません。

そこで、厚生年金保険法等では、このような不合理を避けるための規定を設け受給権者(被害者)、保険者(日本年金機構及び第三者(加害者)間の調整を図っています。

厚生年金保険法第40条 国民年金法第22条 船員保険法第25条

①損害賠償金と障害年金との調整方法

厚生年金保険法等の条文では、各条文の第1項に「政府は、事故が第三者の行為によって生じた場合において保険給付をしたときは、その給付の価格の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」とする「損害賠償権の代位取得」を規定しています。・・・国が第三者(損害保険会社を含む)に対する損害賠償の請求権を取得すること。

また、第2項では「受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で保険給付をしないことができる。」とする「保険給付の免責」の規定を設けています。

実際の損害賠償と年金の調整では、国が損害賠償請求権の代位取得をして求償を行うことは、第三者(保険会社含む)からの報告義務も無いため実務的に実際に行うことは困難なため、日本年金機構では、年金を一旦支給して、受給権者が損害賠償を受けた後に第2項による免責規定を適用しています。

理由
① 損害賠償請求権の代位取得を行った場合は、受給権者に年金の支払いを行う都度第三者に対して求償を行うことになる。この事務は受給権者と第三者が示談を済ませ、受給権者が損害賠償金を受領するまで続くことになるため、その間日本年金機構は示談の状況を常に把握し、年金の支払いを行う都度求償すべきかどうか見極めることが必要になる。

この事務は第三者(保険会社を含む)からの報告義務もない中での第三者の把握が必要こと、該当する受給権者が多いこと、求償事務が長期間にわたることを考えれば実際に行うことは困難である。

② 損害賠償請求権を代位取得し、第三者に求償を行う場合には最大でいくらの額まで求償できるかを確定させる必要があり、そのためには日本年金機構が当該事故について双方の過失割合を決めることが必要になる。さらに被害者が失った過失利益を算出しなければならないことになり、日本年金機構が示談の調停を行うような事にも発展するものである。

以上の点から求償の事務処理は現状行っておらず「保険給付の免責」による方法を取っている。具体的には第三者から損害賠償金を受領した場合は、年金との調整(支給停止)を行っています。

②年金との調整を行う時期

調整は事故日(受給権発生日)の翌月から最長36ヶ月の範囲内で支給停止が行われます。

なお、この支給停止期間の限度月数は旧通知が廃止されたことにより、平成27年10月1日から従前の24月から36月に変更する取扱い(年管管発第0930第6号)とされました。しかし、平成27年9月30日以前に発生した第三者行為災害は従来の24月が限度のままで良いと新通知には但し書きが付記されています。

実務的には障害年金は事故による手足の切断等の場合を除き、初診日から1年6月経過した障害認定日以後の支給ですから、3年から1年6月を差し引いた1年6月間の支給停止期間となります。

事後重症請求や初診日が20歳前にある20歳前障害の請求などでは、障害認定日がすでに36月を経過していて調整対象とならない場合もあります。

実際には損害賠償額等が確定して損害賠償金の授受が完了するまでに年金の請求が行われ、年金が支給されていることがあります。こうした場合は、支給停止期間が満了になった後に支払われる年金額から半額調整されます。

なお、申出により半額調整以外の調整率の変更(1割~全額)と一括納付も可能です。

 

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